◆事業概要
ルクサナバイオテク株式会社は、大阪大学薬学部で開発された、核酸の有効性、持続性の向上と高い安全性を目的とした「人工修飾核酸技術」を基礎とし、
1)同技術の更なる社会実装へ向けた応用展開を進めるために、製薬企業やバイオテックベンチャーと創薬共同開発事業を行う他、
2)大学等のアカデミアから得られた疾患シーズに対して、自ら核酸医薬技術で医薬品開発事業を行う企業である。
また、同社は天然に存在しない有機化学である「人工核酸」によって生み出された分子から構造体(核酸医薬品)を調整して、新たに医薬品を創る技術を持っている。
従来の医療技術では治療が難しい遺伝病や免疫・精神疾患などの患者をターゲットに持つ製薬会社やアカデミア等は核酸医薬に取組む際、
①核酸の適切な配列設計方法を自社で保有してない
②どの構造体を使えば良いか分からない
③製薬の毒性や生体安定性の問題、また薬剤の承認審査上の課題などが障壁となり進み切れない
等の課題が生じることがある。
この課題に対し、同社が有する配列設計ノウハウ、適切な化合物の提供、生産効率を意識した修飾の選択と合成方法、等の価値提供を通じて核酸医薬開発の主要なプレイヤーになることを使命とする。Luxna Biotech(ルクサナバイオテク)の企業名は、修飾核酸群(XNA)を応用した核酸医薬品の開発行い、まだ治療薬が無くて苦しむ患者に、照らす光(Lux)をもたらしたいという願いを込めて命名している。安全で効果的な核酸医薬品の実用化を進め、有効薬が無い病気と闘う患者さんと患者さんを支える方々へ福音となる核酸医薬品を届けることを目指している。
◆ビジネスモデルの特徴と企業の強み
BtoBビジネスを主とし、3つのビジネスモデルで事業を展開している。
1つ目は、自社の強みである核酸の課題であった肝毒性や神経毒性を克服する人工核酸技術を活用し、製薬会社との共同創薬研究の実施や人工核酸技術のライセンス提供すること。
2つ目は、アカデミアの疾患研究シーズを取り込み、自社で核酸医薬開発を行って製薬会社に導出すること。
3つ目は核酸医薬の治療的活用に関する原薬・製剤の化学・製造・品質のコンサルテーションを提供することである。
同社は初期創薬に強みを有するため、製薬会社と初期創薬に於いて役割を分担して研究費を受領する共同研究を行い、医薬品候補開発成功時には、契約一時金及び開発ステージに応じたマイルストーンを達成する毎に達成金を得るインセンティブ方式、及び承認後の売上ロイヤルティで報酬を受け取る。人工修飾核酸技術のライセンス契約と候補の核酸医薬品の知財に関する2契約を締結するため、両面から将来的な収益を見据えた契約としている。
【人工修飾核酸のメリットについて】
◆事業にかける想い
当時、研究員として株式会社ジーンデザインに入社した後、核酸医薬品の製造受託の事業開発に従事していたルクサナバイオテク株式会社CEOの佐藤氏は、日本にも世界をリードしていくポテンシャルが十分にあると考え、その実現に向けてエンジンとなる企業が今後必要となると漠然とした想いも持っていた。日本における核酸化学分野の研究は世界を見ても比較的大きく進歩しているが、実際に医薬品として世の中に出ている人工核酸を応用した製品のほとんどがアメリカ創製である。
アメリカには核酸医薬の巨大企業が2社ある。1つは、ノーベル賞を受賞したRNAiの技術の応用でsiRNAの創薬を行い、自社の販売網で販売を行っている「Alnylam Pharmaceuticals Inc.」。もう1つは、核酸医薬で一番売れているBiogenのスピンラザというアンチセンス薬で共同開発に成功した「Ionis Pharmaceuticals Inc.」の2社である。日本がこの巨大企業2社に対峙することを考えた際、コア技術を実装する候補化合物の同定と最適化のステージまでを導く自身の力と、単に技術を移転するだけの会社ではなく牽引まで一緒にできるパートナー企業がいれば勝ち目があると考えていた。
受託事業を行う中で、いくつかの創薬共同開発にも恵まれ、いつか主体的に医薬品を創りたいとの想いもあった。医薬関連に従事する人は誰しも思うことかも知れないが、自分で手掛けた医薬品を病に苦しむ患者へ届け、助けの手を差し伸べたいと強く考えるようになった。2016年、株式会社ジーンデザインが他社に買収されたことをきっかけに、今後の自分自身の方向性を考え始めた。その直後、以前から信頼関係を築いていた大阪大学教授の小比賀氏の技術が事業化されるという話を聞き、想いを共有し、核酸化学技術の社会実装を実現するため、小比賀教授と共に起業を決意した。小比賀教授と大阪大学ベンチャーキャピタルとの事業構想協議を経て、2018年に退職しルクサナバイオテク株式会社を立ち上げた。
◆今後の事業展開
ルクサナバイオテク株式会社はプラットフォーマーに位置付けられる。核酸医薬を生み出すための共通で使用できる基盤技術を保有することを基礎に、プロジェクト数を増やすことと、そのプロジェクトが進展することの2軸により、安定した収益構造を育む。少ないプロジェクト数ではそれが失敗すると収益が減少するため、できる限り、共同開発の相手先と医薬品候補数を増やしたい。
現在は年1~2件の新規共同創薬開始、先行開発品は前臨床段階、技術ライセンス先では臨床開発を開始しているステージにあるが、プロジェクト数を増やし創薬のステージを進めている。5年後の目標として、年3~5件の新規共同創薬開始、先行開発品は臨床段階、技術ライセンス先での承認に近づきたいと考えている。ただし、患者さんに良質な医薬品を届けることが創業の強い想いであるため、パートナー企業との意思疎通及び協力関係の構築を欠かさず、柔軟な体制を作りながら実現を目指したいと考えている。